フレッシュマン
青木ヶ原樹海の洞窟にて、大量の生肉を噛んでは吐くというパフォーマンス(儀式)を行った。新宿から河口湖へ。近隣のスーパーで購入した鮮肉を携え、スワンボートで湖を巡る。その後、樹海へ向かい、森をしばらく歩いた先にある洞窟に入る。夜が更ける頃、私はおもむろに生肉を口に運び、噛んでは吐き、噛んでは吐いた。生肉の繊維を断ち切る歯の感触、口腔内に広がるナマの味、吐き出される唾液と肉の塊。それを、肉が尽きるまで繰り返す。行為を終え、私は私の口を経て変形した肉を、我が子のように抱えて洞窟を出る。暗闇に沈んだ森では、動物たちが草を揺らし、かすかな気配を放っていた。ほのかな光で足元を照らし、クマ避けの鈴を鳴らしながら、数時間歩き続ける。そして朝が訪れ、変身した私は日常へと帰還する。
これは、日常から離れ、凝り固まった価値観を抱える身体を捨て、生まれ直すための儀式であった。私はこうして、「フレッシュマン」となったのだ。